今回は石岡瑛子について。
年末から読み始め、ようやく読了しました。
576ページという大変なボリュームからも著者の労苦がうかがえます。
5年の歳月を掛け、本人や関係者にインタビューした内容を丹念になぞりながら、彼女の人となりを感じることができました。
「激しくてラブリー」彼女を表すには、確かにそんなコピーをうってつけかもしれません。
本書は、石岡瑛子の評伝、という位置づけで彼女の仕事の全貌が丁寧に書かれていて
一人のデザイナーの生涯にわたる作品群を網羅したという点でも大変興味深い内容でした。
デザインに携わるひと、携わりたいと思い人は一度目を通してほしい本。
単純に面白く読みました。
彼女の仕事の裏側を知る、という以前に70年代という激動の時代を生きた一人のデザイナーの伝記として、大変貴重なものです。
「命のデザイナー」というキャッチフレーズの通り、デザインという仕事に命、生涯をかけて挑んだ彼女の挑戦の歴史とも言えます。
グラフィックデザインはサバイヴできるか
石岡瑛子は、資生堂のデザイナーとして、数々の斬新な広告を世に放ちながらも、常にこのジレンマと戦っていた。
広告は、クライアントのものであって、芸術ではない、ましてデザイナーのものでもない。
テレビであれ、新聞であれ、メディに露出する広告は、すべて企業のブランドと並走している。
企業のブランド価値を高めるものが、広告であり、デザイナーの分身ではない。
ここが「グラフィックデザインはサバイヴできるか」という、生涯にわたる問いに繋がります。
しかし、石岡瑛子は、企業のブランド価値とともに、自身のデザインリソースをアートへと昇華させた数少ないデザイナーだと思う。
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